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ビットコインの相場は予測可能か? (7)最終回 ビットコイン市場に投資理論は通用するのか

仮想通貨と投資理論

第5回までの記事では株価を中心とした一般の投資理論の解説を、そして第6回は仮想通貨についての概略を解説しました。そしてとうとう今回、核心である「仮想通貨相場の予測」について議論したいと思います。少々長くなりますが、お付き合い頂けますと幸いです。

 

これまでに私達は、相場を予測する2種類の手法について学びました。1つは「ファンダメンタル分析」でした。金融商品の本来の価値(ファンダメンタル価値)を算出し、ファンダメンタル価値より安い時に買い、ファンダメンタル価値より高い時に売ることで、その差額を利益とする手法です。2つ目は「テクニカル分析」でした。過去の相場変動(チャート)を分析し、チャート変化の傾向を見つけることで、未来の相場変動を予測する手法です。

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これらの手法が、仮想通貨の相場に通用するのかを見ていきましょう。

 

テクニカル分析は仮想通貨に通用するか

数百年の歴史を持つ株式相場ですら、テクニカル分析による予測は困難であることを、第5回の記事で説明しました。その論理は、そのまま仮想通貨の相場に当てはめることができます。

テクニカル分析により相場を予測するためには、自らの力でアノマリー(ランダムでない相場変動)を発見するしかありません。それが、一個人の力では到底無理なことは、説明した通りです。

さらに、仮想通貨の場合、もう一つの大きな問題を抱えています。テクニカル分析は、過去のチャートを分析してその傾向を見つけ出す手法です。数百年の歴史を持つ株価と違い、仮想通貨の相場は誕生してから間もありません。そもそも、分析可能なだけのチャートの量がほぼ無いのです。

 

すなわち、テクニカル分析による仮想通貨の相場予測はほぼ不可能ということになります。

 

ファンダメンタル分析は仮想通貨に通用するか

次に、ファンダメンタル分析の検討をしてみます。まず、株式相場におけるファンダメンタル分析について復習しましょう。

株式市場においては、特定の条件においては相場の予測が可能であることを説明しました。それは、中小企業やベンチャー企業など、投資家の目が行き届いていない企業で、株価がファンダメンタル価値より低く放置されている場合です。

 

仮想通貨に置き換えて考えてみましょう。いまさら説明の必要も無いでしょうが、ビットコインは最も有名な仮想通貨です。「投資家の目が行き届いていない」状態とは程遠いと言えます。つまり、この段階で既にビットコインファンダメンタル分析の対象から外れるのです。

それでは、「投資家の目が行き届いていない」仮想通貨は、何があるでしょうか。仮想通貨と言ってもビットコイン以外にも多くの仮想通貨が存在します。有名なものとしては、イーサリアムリップルなどが挙げられます。その他にも多種多様な仮想通貨があり、その中でも時価総額が少ないマイナーなコイン、いわゆる「草コイン」も存在します。この草コインこそが、「投資家の目が行き届いていない」仮想通貨と言えるでしょう。

 

仮想通貨に内在する大きな問題

株式市場と同じ論理を使うとすれば、時価総額が少なく投資家の目が届いていない草コインは、ファンダメンタル分析の余地があるように思われます。しかしながら、ここで一つの大きな問題が生じます。それは、「仮想通貨のファンダメンタル価値とはなんなのか」という問題です。

株式市場の場合、ある株式には、現実にその株式を発行している会社が存在し、そしてその株を持っていることによって得られる配当金があり、それらの要素を足し合わせることで、その株が持っている本来の価値(=ファンダメンタル価値)を算出することができます。

 

一方、仮想通貨の場合はどうでしょうか。無論、仮想通貨には配当金は存在しません。また、第6回の記事で説明したように、仮想通貨は日常生活で用いる法定通貨とは大きく異なります。仮想通貨は「国家からの自由」を謳う通貨です。管理・運用主体が存在せず、支払い能力を保障する強制通用力も持ち合わせていません。

 

ファンダメンタル価値とは、「本来持っているべき価値」のことです。しかしながら、上で説明した通り、仮想通貨にはその価値を保障する拠り所が存在しません。すなわち「本来の価値」が存在しないのです。最新の研究*でも、ビットコインのファンダメンタル価値がゼロであることが報告されています。

*) E.-T. Cheah and J. Fry, Economics Letters 130, 32 (2015).

 

さて、ファンダメンタル分析とは、「ファンダメンタル価値より安い時に買い、ファンダメンタル価値より高い時に売ることで、その差額を利益とする手法」でした。

ところが、仮想通貨のファンダメンタル価値はゼロなのです。果たして、仮想通貨の相場では一体何が起こっているのでしょうか。

  

ファンダメンタル価値からの乖離、その名も

ファンダメンタル価値は「本来の価値」ですから、理想的には、全ての金融商品の価格はファンダメンタル価値へと落ち着くはずです。しかし、現実はそうはなりません。取引を行っている投資家全員が、相場に関する情報を全て完璧に把握することはあり得ないからです。しかし、投資家同士がそれなりに信頼性のある情報を共有していれば、相場はファンダメンタル価値の周辺で細かく変動するに留まるはずです。

ところが、何らかのきっかけで、相場がファンダメンタル価値を大きく上回るような状況が存在します。見かけ上の価値が、本来の価値を大きく上回ってしまうのです。この「ファンダメンタル価値からの価格の乖離」は、一般的にはバブルと呼ばれる現象です。

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歴史が証明している通り、通常の株価などにおいてもバブルは発生しえます。根拠のない相場の過熱によって、株価が急騰していくのです。しかしながら、その後待っているのはバブルの崩壊です。「崩壊しないバブルは無い」との言葉もある通り、バブルとは一時のみの異常事態であり、いずれファンダメンタル価値に向かって相場は急落する運命なのです。

 

「仮想通貨のファンダメンタル価値はゼロ」「ファンダメンタル価値からの価格の乖離がバブル状態」という2つの事実から、ある答えが導かれます。それは、仮想通貨は値段が付いた時点でバブル状態であるということです。私達は、ビットコインの値段が上がった、下がったと一喜一憂していますが、その相場も全てバブルが引き起こしているのです。 

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何故バブルが発生するのか

それでは、そもそも何故バブルが発生するのでしょうか。価格がファンダメンタル価値を中心にして上下するだけであれば、ファンダメンタル価値からの大幅な乖離など発生しないのではないでしょうか。

実は、「バブルが何故発生するのか」という問いに対して、明確な答えはありません。しかし、現時点で説明可能な理論が2つあります。

 

1つ目は、行動経済学からの説明です。ある株の株価が継続的に上がっているのを見た人は、「今後も上がるのではないか」と考え、その株を買いたくなるでしょう。そのような人が多くいれば、その株の買い手が増えることから、株価はさらに上がります。すると、買いたい人が再び増えます。このように「株価が上がった株は買いたくなる」という正のフィードバックがバブルを発生させるという説明です。

 

2つ目は、カオス理論からの説明です。投資家一人一人の「売りたい」「買いたい」といった感情が相場の変動を引き起こし、相場の変動が投資家の感情変化を引き起こします。このプロセスを多数繰り返した時に、予測不能な相場変動が生じる、という説明です。

 

重要なことは、上記のどちらの説明においても、「人間心理」という不確かなモノがバブル発生の原因であるということです。そして、バブルがそういった不確かなモノから発生している以上、このどちらの説明においても、バブルの生成・崩壊は予測不能なのです。

 

常にバブル状態である仮想通貨は、いつ価格が急騰し、いつ価格が暴落するのか、誰にも予測ができないことになります。

 

ビットコインの相場は予測可能か?

長い旅路でしたが、とうとう私達は「ビットコインの相場は予測可能か?」という疑問に対する答えを得たことになります。

相場を予測する「テクニカル分析」「ファンダメンタル分析」のどちらも、仮想通貨には通用しないということが明らかになりました。

得られた結論は、ビットコインの相場はたとえ誰であっても予測不能だということです。

 

それは、投資の初心者であろうが、熟練の投資家であろうが、誰にとっても変わりません。

ビットコインへの投資は、そのお金の行方をそっくりそのまま天の意志に任せていることにほかならないのです。

 

最後になりますが、この記事は「仮想通貨の相場は誰にも予測できないから、投資するべきではない」という目的で書いたわけではありません。人間は本質的にギャンブルが好きですから、予測のできない賭けに対してお金を投じる生き物です。

そうではなく、「自分もビットコインで一儲けできるのかな」とか「仮想通貨って結局なんなんだろう」という疑問を抱えた人に対して、一つの解答を用意したくて書いたものです。

 

この記事が、読者の皆様が仮想通貨の投資を検討する上で一つの材料になれば、私にとって何よりの幸せです。

 

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

中島真志『アフター・ビットコイン

ビットコインの相場は予測可能か? (6) 仮想通貨とは何か

仮想通貨とは

ビットコインの相場の話に入る前に、まずは、いわゆる「仮想通貨」について概要を解説したいと思います。ビットコインもこの仮想通貨の一種に分類されます。というよりも、ビットコインから仮想通貨の歴史が始まったのです。

仮想通貨は、一言で言えば、インターネットを介して電子データで取引をする「通貨のようなもの」です。とはいえ、単に電子データでの取引なら、もう何十年も前から実用化されています。仮想通貨がここまで話題に上っているのは、ある革新的な暗号化技術が採用されているからです。その暗号化の技術は、ブロックチェーン技術とよばれます。

 

仮想通貨を特徴づける「ブロックチェーン技術」

ブロックチェーンとは、電子取引における取引の信頼性を飛躍的に高める技術です。電子取引は、電子データの送受信ですから、どうしてもハッキングの対象になり、取引そのものが改竄される危険性を孕んでいます。ブロックチェーンでは、過去の取引がブロックに分けられ、過去から現在までの全ての取引が、複雑な計算によりチェーンのように紐付けてられています(この計算のことを「マイニング」と呼びます)。過去の取引を改竄しようとすると、チェーンによって紐付けられた現在の取引までの全ての取引を計算し直さなければならず、現実的には改竄が不可能なのです。これが、ブロックチェーンによる取引の信頼性が担保される仕組みです。

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この説明からもわかる通り、ブロックチェーンそのものに全く新しい技術が使われている訳ではありません。ブロックチェーンとは、言うなればアイデアのようなものです。一度思いついてしまえば、ブロックチェーンをプログラムすることはそれほど難しくありません。しかし、その誰も思いつかなかったアイデアを生み出した事こそが、ブロックチェーンが革新的である理由なのです。

 

普通のお金(法定通貨)との違い

仮想通貨は「通貨」という名が付いていますが、日常生活で使う通貨、すなわち「日本円」や「ドル」などとは大きく異なります。いわゆる通常の通貨は「法定通貨」ともよばれます。

法定通貨と仮想通貨の最も大きな違いは、通貨をコントロールする管理主体の有無です。法定通貨の場合は、通貨を発行する国家が責任を持って、通貨の流通を管理します。日本円の場合、日本政府が管理主体となります。

一方、仮想通貨の場合は、管理主体が存在しません。円やドルなどは、国家が責任を持って管理しているので、国が崩壊しない限り価値が保証されるというメリットがあります。一方、その国の財政状況や政策によって価値が左右されるというデメリットもあります。そんな中、世界中のどの国にも縛られず、世界中の誰とでも自由に取引できる通貨が作れないか──それがビットコインの理念なのです。

法定通貨の場合は、紙幣に複雑な偽造防止の処理などを施すことによって取引の安全性を高めています。仮想通貨において、偽造防止処理に相当するものがブロックチェーンなのです。

 

国家による保証「強制通用力」 

管理主体の有無以外に、もう一つ重要な違いがあります。それは、法定通貨には「強制通用力」という効力が国家によって保証されているという点です。強制通用力とは「取引において法定通貨での支払いを拒否できない」という性質のことです。すなわち、「日本でのモノの売り買いには、必ず日本円が使えますよ」ということを国家が保証しているのです。

日本円は変動相場制の下に運用されていますから、国際的に見た日本円の価値は、投資家の思惑に大きく左右されます。それでも、日本円の価値が突然何倍にもなったり、逆に突然ゼロになったりはしません。それは、日本円が日本という国家により管理・運用されているという「国の信用」と、日本円で日本のモノを買うことができるという「モノの信用」、これらの「見えない価値」が日本円の中に含まれているからです。

 

話を仮想通貨に戻し

さて、曲がりなりにも通貨の名を冠する仮想通貨について再考してみましょう。仮想通貨は「国家からの自由」を謳う通貨ですから、もちろん管理・運用主体に国は関与しません。また、もちろん強制通用力も持ち合わせていません。法定通貨とは、性質が全く異なることがお分かりいただけるでしょう。この違いが、今後の議論で重要になってきます。

 

前段にしては話が長くなってしまいましたが、仮想通貨がどういったものなのか、概要は把握いただけたかと思います。それでは、次回から本題の仮想通貨の相場予測に入りましょう。

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

中島真志『アフター・ビットコイン

ビットコインの相場は予測可能か? (5) 株式市場に投資理論は通用するのか

現実の相場の動き

相場の動きは予測できないとする「ランダムウォーク理論」肯定派と否定派の闘いの末、現実の相場は「ほとんどはランダムだが、一部でランダムでない動きをする」ということがわかりました。そして、そのランダムでない相場変動のことはアノマリーとよばれました。

さて、それではいよいよ投資理論の大詰めです。上述の通り、相場は完全なランダムではないことが分かりました。それでは、その「ランダムでない動き」に着目し、相場変動を予測することはできるのでしょうか。

 

2つの相場予測方法

過去の記事で解説した相場を予測する2つの方法について復習しましょう。

1つは「ファンダメンタル分析」でした。金融商品の本来の価値(ファンダメンタル価値)を算出し、ファンダメンタル価値より安い時に買い、ファンダメンタル価値より高い時に売ることで、その差額を利益とする手法です。

2つ目は「テクニカル分析」でした。過去の相場変動(チャート)を分析し、チャート変化の傾向を見つけることで、未来の相場変動を予測する手法です。

それでは、これら2つの予測方法について、あらためて妥当性を検証してみましょう。

 

ファンダメンタル分析

ランダムでない相場変動「アノマリー」の存在が判明してから、投資家や研究者達によって、数々のアノマリー探しが始まりました。そこで発見されたアノマリーの一つが「小型株効果」です。

小型株とは、時価総額の小さい株のことを表します。時価総額の小さい株ほど、ランダムとは異なる相場変動を示すことがわかったのです。

ここで、相場がランダムになる根拠の効率的市場仮説について復習しましょう。市場は常に最新の情報と投資家の意思を反映しているため、相場はランダムになるという理論でした。

この効率的市場仮説の内容を考えると、なぜ小型株効果が発生するのか理解できます。小型株とは、すなわち規模の小さい会社の株のことです。投資家の目線は、まずは有名な会社、大きな会社に向きます。 規模の小さい会社に対しては、証券会社のアナリストが担当していないケースも多く、投資家も投資をしづらいのです。

投資家の目線が向きにくいということは、小型株の価格には投資家の意思が反映されづらいということを意味します。すなわち、効率的市場仮説の前提が機能していないのです。投資家の目線が向きにくいから、株価がファンダメンタル価値に比べて割安のまま放置されていることが多く、その結果、相場がランダムとは異なる動きを示します。

 

ファンダメンタル分析による相場の予測

以上の議論から分かったことは、規模の小さい(投資家の目が行き届いていない)会社のファンダメンタル価値を分析すれば、相場を予測できる可能性があるということです。

具体的には、中小企業やベンチャー企業など、投資家の目が行き届いていない会社のビジネス内容や財務諸表を分析し、会社のファンダメンタル価値を算出し、それに対して株価が低ければ買うということになります。

このように、相場が予測できる可能性があるとはいえ、その方法はそう簡単ではないようです。実際に実践するには、高度な専門性と経験が必要になるでしょう。とはいえ、今回の話としては「相場は予測可能なものだ」という一つの結果が得られたことは、大きな収穫です。

 

テクニカル分析

次に、テクニカル分析に対応するアノマリーは存在するのか、すなわち、チャート分析によって「ランダムでない相場変動」を発見できるのか、という疑問に焦点を移しましょう。

結論から言うと、研究者によるアノマリー探しの結果、これらのアノマリーも発見されることになります。その一つがモメンタム効果です。モメンタム効果とは、相場が一旦上昇や下降のトレンドに乗ると、それがしばらく続くというアノマリーです。さらに、研究者達によって、相場のトレンドを示すアノマリーが次々に発表されていくことになります。

 

さて、これだけを聞くと、テクニカル分析を用いれば、相場を予測し確実に利益を得ることができるのではないか、と思われるかもしれません。ところが、現実の世界はそう上手くいきません。なぜなら、アノマリーであると公表され、手法が広まったアノマリーは、アノマリーでは無くなってしまうのです。

 

相場がランダムに動く原因は、最新の情報と投資家の意思が反映されるという、市場の効率性によるものでした。しかしこれを裏返せば、アノマリーが生じる原因は、投資家達の中で生じる情報の偏りが原因であると言えるのです。

仮に、ある投資家がチャートの特徴を分析し、新しいアノマリーを発見したとします。投資家がその事実を誰にも言わず、個人のみでその情報を利用していれば、そのアノマリーを利用して利益を上げることができるでしょう。

しかし、発見したアノマリーを公表すると、他の投資家もそのアノマリーを利用した売買を始めます。公表されたアノマリーを利用する売買手法が広まると、投資家の資金はそこに集まり、限られた投資機会に膨大なお金が流れ込みます。その結果、それが市場の効率化を促し、投資家同士の情報の偏りが減少していきます。その結果、アノマリーが消えていくのです。

 

テクニカル分析による相場の予測

以上の議論をまとめると、テクニカル分析に対応するアノマリーは存在するが、既に公表され書籍やインターネットで紹介されている手法は、ほぼ効力を持たないということになります。仮にテクニカル分析による相場予測がをするとしたら、自力でアノマリーを発見するしかありません。しかし、株式市場は既に膨大な研究の対象になっており、一個人が新たなアノマリーを発見するのはほぼ不可能でしょう。

 

手法を公開するとその効果が無くなるとしたら、テクニカル分析で利益を上げ続けるためには、徹底してその手法を隠し通さなければなりません。それを体現するかのように、徹底した秘密主義により、利益を上げ続ける伝説のファンドが存在します。ルネサンス・テクノロジーズと呼ばれるファンドです。

ルネサンスは数学者、暗号解読技術者、天文物理学者、人工知能学者などの各分野のスペシャリストを雇い、相場を予測するアルゴリズムを開発しています。しかし、ルネサンスは社員に厳しい秘密保持を要求し、決してその手法を外部に公開しません。そしてその結果、過去約30年で平均40%という驚異的な利益率を維持しているのです。伝説の投資家と言われるバフェットですら20%台であることを考えると、桁違いの成績と言えます。

 

まとめ

少々長い道のりでしたが、これで私達は投資理論の全体像を一通り眺めたことになります。これまでの内容を要約すると、以下のようになるでしょう。

 

  1. 相場は基本的にランダムに動くが、一部ランダムでない動き(アノマリー)が存在する
  2. 相場の分析手法には、株式の本来価値(ファンダメンタル価値)を分析するファンダメンタル分析と、チャートを分析するテクニカル分析の2種類が存在する
  3. 小型株をファンダメンタル分析することにより、相場を予測できる可能性がある
  4. 既に公開されたテクニカル分析手法にはほとんど効果がないため、テクニカル分析で相場予測するには自らでアノマリーを発見するしかない

 

それでは、これらの考察を武器にして、次回からはついに仮想通貨(ビットコイン)の相場に焦点を当てていきたいと思います。

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

ビットコインの相場は予測可能か? (4) 市場は本当にランダムなのか

ランダムウォーク理論が生んだ反発

 「相場は全てランダムに動く」と主張するランダムウォーク理論。前回は、そんなランダムウォーク理論の概要と、それを根拠付ける効率的市場仮説について説明しました。

さて、ランダムウォーク理論が主張する通り、相場が全てランダムに動くとしたら、相場の予測は無意味ということになります。そんなランダムウォーク理論は、投資家から激しい反発を受けることになりました。仮にランダムウォーク理論が正しければ、一生懸命相場を読んだり銘柄を選んでいる投資家の努力は、何の意味も持たないことになってしまうからです。

それ以降の投資理論の歴史は、「ランダムウォーク肯定派」と「ランダムウォーク否定派」との争いの歴史であったとも言えます。今回は、前回に引き続き歴史になぞり、肯定派と否定派との闘いを見ていくことにしましょう。

 

ランダムウォーク肯定派 vs ランダムウォーク否定派

 ランダムウォーク理論は、「プロの投資家よりも市場平均の方が優秀」という実証的根拠と、「相場が正規分布に従う」という統計的根拠により裏付けられていました。これらの強力な根拠を覆すためには、ランダムウォーク否定派としても、何かしら説得力のある根拠を用意する必要があります。

 

否定派の反論

ランダムウォーク否定派が肯定派へ反論するための方法として、簡単なものが一つ挙げられます。「この方法を用いれば投資で儲けることができる」と主張して、実際にその方法で儲けてみせれば良いのです。ランダムウォーク理論が正しければ、どんな方法でも儲けるか損するかは五分五分です。仮にその「投資で儲ける方法」で継続的に利益を上げられるとしたら、それがランダムウォーク理論への反例となります。

そんな「投資で儲ける方法」を実際に実践してみせた伝説の投資家がいました。ウォーレン・バフェット(1930-)です。バフェットは、優良企業の株を長期保有するという方法で、約60年もの間、平均して20%以上の投資リターンを維持しました。仮に相場がランダムウォークであると仮定した場合、バフェットと同じ実績となる確率は1億分の1であり、限りなく低いものとなります。「バフェットは着実に利益を出し続けている」、これが投資家からランダムウォーク肯定派への反論です。

 

肯定派の反論

それに対して、ランダムウォーク肯定派は次のように反論しました。「確かに1億分の1の確率は低い確率だが、世界の人口を考えればあり得ない確率ではない」と。

確かに、世界人口が数十億人であることを考えたら、1億分の1は十分起きうる確率です。すなわちランダムウォーク肯定派の立場では、「飽くまでバフェットも運が良かっただけ」で説明できてしまうのです。

バフェットという伝説的投資家の存在により成功するかに見えたランダムウォーク否定派の反論は、再び降り出しに戻ってしまいました。やはり「相場はランダムに動く」という理論を覆すことはできないのでしょうか。

 

再び否定派の反論

ここでランダムウォーク否定派が目をつけたのは、肯定派がその根拠としていた効率的市場仮説でした。

効率的市場仮説とは、「市場は常に最新の情報と投資家の意思を反映している」ために相場がランダムとなり、その結果としてヒストグラム正規分布となるという主張でした。正規分布は、数学的に計算できる分布です。ここで、前回掲載した日経平均ヒストグラムに理論上の正規分布のグラフを重ね合わせてみましょう。

 

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これを見ると、確かにヒストグラムは概ね正規分布と一致した分布です。しかし、決定的に違う部分があります。それは、矢印で示した「±5%以上」の領域です。

理論上の正規分布では、この領域ではほとんどゼロとなっています。仮に相場が正規分布に従うとしたら、1日で5%以上の相場変動がある日は0.013日しか存在しません。しかし、現実の相場では、50日近く存在しているのです。

すなわちこれは、理論上だと4000年に1度しか起こらないはずの相場変動が、ほぼ毎年発生していることを意味します。これは、ランダムウォーク理論に生じた、僅かな隙でした。この結果を出されてもなお「相場は完全に正規分布に従っている」と主張するのは、さすがに無理があるでしょう。

 

相場はランダムではなかった

このヒストグラムから分かる通り、相場は時として、正規分布では説明できない、特異な動きを示すのです。そしてこれによって、ついに、相場は完全なランダムではないことが判明しました。そして、そのような正規分布では説明できない特異な相場変動は”アノマリー”と呼ばれます。

 

アノマリーはなぜ生じるか

 それでは、なぜアノマリーが生じるのでしょうか。その秘密は、効率的市場仮説に隠されていました。

繰り返しになりますが、効率的市場仮説とは、市場は常に最新の情報と投資家の意思を反映しているため、相場はランダムになるという理論です。

しかし少し冷静になってみると、全世界で何千何万とある株式の全ての銘柄に対して、投資家が常に最新の情報を収集し、即座に売買を実施していることなど考えられるでしょうか。アップルやトヨタなど、有名な株であれば近いことが行われているかもしれません。しかし、非常にマイナーで時価総額も低い株式に対して、投資家が常に最新の情報を収集するとはとても考えられません。

すなわち、効率的市場仮説とは、現実の投資の一部を単純化したモデルでしか無かったのです。

 

現実の相場の動きは・・・

 とはいえ、現実の相場では、多くの場合はランダムウォークに近い動きをします。それは、多くの場合においては、効率的市場仮説が成り立つような状況で売買が行われているからです。一方で、その範囲を外れるような場合は、アノマリーとして特殊な相場変動が引き起こされます。

「ほとんどはランダムだが、一部でランダムでない動きをする」というのが、現実の相場を説明する最も正確な表現でしょう。

 

まとめ

 一時、投資の世界を席巻したランダムウォークでしたが、アノマリーの存在により、完全なランダムではないことが証明されました。

そうなると、次なる興味は「相場が完全なランダムで無いならば、やはり儲ける方法があるのではないか?」ということでしょう。

 

次回は、これまでの議論を踏まえ、最終的に投資理論がどれほど通用するのかを考えてみたいと思います。

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

ビットコインの相場は予測可能か? (3) 投資理論への反逆 -ランダムウォーク理論-

投資理論は正しいのか

誰もが一度は「投資で一攫千金」という夢を見るのではないでしょうか。そんな夢を獲物にするかのように、世間には相場予測の情報が溢れかえっています。前回は、そんな相場予測の手法として「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」を説明しました。

そして、その結果生じる「この方法を使えば本当に誰でも儲けられるのか?」という疑問。

すなわち、投資理論は正しいのか?という問いについて、今回は考えてみましょう。

  

歴史に学ぶ

 投資理論が長い歴史を持つことは説明しました。そこで、ここからは、過去の歴史を追体験する形で疑問への回答を探していきましょう。

 

チャートを分析するテクニカル分析の始まりは、「ダウ平均株価」でもその名が知られるチャールズ・ダウ(1851-1902)だと言われています。ダウの「ダウ理論」によってテクニカル分析が幕を開けると、その後、コンピュータの発達によってチャートの分析手法は発達を続け、テクニカル分析は隆盛を極めました。

テクニカル分析の基本的な考え方は、チャートの分析によって機械的に売買のタイミングを決定するというものです。テクニカル投資家は、この条件の時はこの法則、この条件の時はこの法則、と様々なチャート分析によって相場を予測します。

 

ところが現実には、テクニカル分析をして売買しても、結果は勝ったり負けたりだったのです。このとき投資家が抱えていた疑問が、まさに上記の疑問です。すなわち、当時の投資家も「テクニカル分析の手法はどんどん発達していくけれども、果たしてこのテクニカル分析は本当に正しいのか?」と思い始めていました。

 

そんな時、投資の世界に恐るべき理論が侵入してきました。それは、それまで培った投資分析を真っ向から否定するような理論です。その理論は、「ランダムウォーク理論」とよばれるものでした。

 

ランダムウォーク理論の登場

ランダムウォーク理論とは、その名の通り「相場は完全にランダムに動く」という理論です。投資理論は、相場に関する情報を分析することにより、未来の相場を予測するためのものでした。ランダムウォーク理論は、そんな投資理論の全てを否定し、相場の予測など無意味だと主張するのです。

 

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もちろん、何の根拠も無しにランダムウォーク理論が広まったわけではありません。

もともと投資家の間では、相場の予測精度は疑問視されていました。そんな中、ランダムウォーク理論の正当性を裏付けるような調査結果が発表されます。

1969年、115社のファンドを10年間調査して、市場平均に勝てたファンドはわずか26社だという調査結果が公表されました。市場平均とは、株式市場の価格の平均値のことです。すなわちこの調査結果は、テクニカル分析で相場を予測して株を買うよりも、株式市場の平均を機械的に買った方が儲けられるということを示していました。

プロのテクニカル分析家に任せるより、市場平均となるような株式の組合せ(ポートフォリオ)を持っていた方が利益を上げられることが数々の検証により判明したのです。

 

その後もランダムウォーク理論の正当性を裏付けるようなデータが次々と現れ、ランダムウォーク理論は次第に浸透していきました。1980年代の後半には、機関投資家でチャートを分析する専門家がほぼ居なくなったそうです。プロの投資家ですら、相場は予測できないものだと認めたのです。

 

相場はなぜランダムウォーク

数々の検証によって、どうやら相場はランダムに動くらしいことがわかりました。さて、それではなぜ相場はランダムに動くのでしょうか。

 

ランダムウォーク理論は、「効率的市場仮説」とよばれる仮説により裏付けられています。効率的市場仮説とは、「市場は常に最新の情報と投資家の意思を反映している」という仮説です。

投資家がある企業の株を買うか売るかを決める際には、何らかの情報を参考にしているはずです。たとえばその企業が新商品を発表したとか、不祥事が判明したとか、はたまた政治家の発言も影響があるかもしれません。

仮に、その情報が発表された直後に、世界中の投資家が一斉に売買したとします。すると、その時点で、その株の価格変動に関する情報は、全て株価に織り込み済みということになります。

 

現在の価格が過去の全ての情報を反映したものだとしたら、その次の瞬間にどのような価格変動を起こすかは、誰にも分からないことになります。なぜなら、その次の瞬間の価格は、その次の瞬間の情報を元に決定されるからです。このように、投資家が情報を即座に市場に反映する(効率的に売買する)という仮説が効率的市場仮説です。すなわち、効率的市場仮説が正しければ、相場は完全にランダムに動くため、予測は一切できないことになります。

 

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下の図は、日経平均株価の1日毎の価格変動をヒストグラム化したものです。ヒストグラムの形状が、綺麗なつりがね型の分布(正規分布)をしていることがわかります。ヒストグラム正規分布型をしていることは、相場がランダムに変動していることの統計的証拠となります。日経平均だけでなく、その他の株式指標で同様な統計を取っても正規分布になることが知られています。

 

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結局

これまでの内容をまとめましょう。

前回の投稿では、相場の予測方法について説明しました。しかし今回登場したランダムウォーク理論は、その考えを真っ向から否定しました。そして、ランダムウォーク理論は「プロの投資家よりも市場平均の方が優秀」という実証的根拠と、「相場が正規分布に従う」という統計的根拠により裏付けられました。

 

 

さて……それでは、相場の予測は本当に一切不可能なのでしょうか?

 

まだその結論を出すのは早計なようです。

 

次回は、投資の世界を荒らし回ったこの「ランダムウォーク理論」について、もう一度よく考えてみたいと思います。

 

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

ビットコインの相場は予測可能か? (2) 投資で儲ける方法

投資で儲けるには?

 突然ですが、「投資で儲ける方法」はなんだと思いますか?

 

色々なことが考えられるでしょうが、投資で利益を得ている人が確実に実践していることが一つあります。それは「安く買って高く売る」ことです。何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、これが全ての原点なのです。以下で説明する投資理論も、結局は「安く買って高く売る」という目的のための手段に過ぎません。

 

とはいえ、そう簡単に実践できるなら理論など必要ありません。重要なのは、「いつ買っていつ売れば良いのか」、すなわち売買のタイミングです。

 

言い換えると、株価などの価格がどのような時に下がり、どのような時に上がるのか。これを予測できれば「安く買って高く売る」ことが可能になります。

 

相場を予測する2つの方法

長い投資の歴史の中で、相場を予測する方法が大きく分けて2つ提唱されました。その2つの方法とは「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」と呼ばれるものです。以下で一つずつ説明していきたいと思います。

 

ファンダメンタル分析

ファンダメンタル分析とは、「ファンダメンタル価値」とよばれる値を算出して相場を予測する手法です。

 

ファンダメンタル価値とは、株などの金融商品が持っている「本来の価値」のことです。ある株の価格を考えたとき、その価格は市場取引の結果によって時々刻々と変動します。

しかしながら、市場取引によって変動する価格は、飽くまで金銭で表された外面的な価値であり、本来その株が持っているはずの価値=ファンダメンタル価値は変わらないはずです。

 

たとえば、ある株Aのファンダメンタル価値が1,000円だとします。

ここで、株Aの市場取引価格が1,100円だった場合、買い手の投資家としては、1,000円の価値の株に1,100円も払いたくありませんから、買い手がつきません。よって株Aの売り手は、株を売るためには価格を下げることになり、その結果、株Aの価格はファンダメンタル価値の1,000円に近づいていきます。

逆に株Aの価格が900円の場合は、1,000円の価値の株が900円で買えるため、買いが殺到し値段が上がり、やはり1,000円に近づきます。

 

これはすなわち、需要と供給の考え方に他なりません。

モノの価格は、買い手の需要と売り手の供給が均衡する点で決定されます。この均衡点こそが、株式におけるファンダメンタル価値なのです。需要供給のシステムがある限り、株の市場価格は、ファンダメンタル価値を中心にして上下することになります。

つまり、市場価格がファンダメンタル価値より低い時に買い、ファンダメンタル価値より高い時に売れば、「安く買って高く売る」ことができるのです。これがファンダメンタル分析です。

 

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テクニカル分析

相場を予測するもう一つの方法がテクニカル分析です。テクニカル分析とは、過去の相場(チャート)のパターンから、今後の変動を予測する手法です。チャート分析とも呼ばれます。

具体例で見てみましょう。たとえば、下のようなチャートがあったとします。テクニカル分析では、チャートの分析を通じて相場の上昇傾向、下降傾向を予測します。

 

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このチャートに、短期移動平均(ある一定期間の相場の平均値で、期間を短く取ったもの)と長期移動平均(期間を長く取ったもの)を重ねたものが下の図です。

このとき、短期移動平均と長期移動平均が重なる点が見られます。テクニカル分析では、短期移動平均が長期移動平均を下から横切った点を「ゴールデンクロス」、上から横切った点を「デッドクロス」と呼びます。

チャートを見ると、ゴールデンクロスが発生した後に価格が上昇し、デッドクロスが発生した後に価格が下落しています。

 

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すなわち、この分析法に則って、ゴールデンクロスが発生した時に買い、デッドクロスが発生した時に売れば、機械的に「安く買って高く売る」ことができるのです。

このように、チャートの分析により特徴的な構造を見つけ出し、売買のタイミングを決定する方法がテクニカル分析です。

 

これであなたも投資家に

ここまでの内容をまとめましょう。投資で利益を得る方法は、相場を予測し「安く買って高く売る」こと。そして、相場を予測する方法には、ファンダメンタル価値を分析する「ファンダメンタル分析」と、チャートを分析する「テクニカル分析」の2種類がありました。

 

世の中にはインターネットという便利なツールがありますから、これらの分析法についても、お金をかけずにより深く学ぶことができます。

特に、テクニカル分析に関する情報は、ネットにも、書店にも、山のように存在します。テクニカル分析は、長い時間をかけて研究されてきた歴史のある分析手法です。きっと、これであなたも投資で儲けることができるようになるはずです。

 

 

────さて、ここまで読まれた方であれば、一つの疑問を頭に思い浮べていることでしょう。

その疑問とは、「この方法を使えば本当に誰でも儲けられるのか?」という疑問です。

 

また、

「そんな決まった方法があるならみんな儲けられるはずじゃないのか?」

「でも、ちゃんと勉強すれば儲けられるのかもしれない……」

といったようにも思われているかもしれません。

 

これらはもっともな疑問です。「確実にお金を稼ぐ方法があります!」と言われて、無条件に信じる人はそうそう居ません。

きっと皆さんの頭の中では、「そんな簡単に稼ぐ方法があるわけない」という思考と「でも、もしかしたら稼げるのかも」という思考が混ざっていることでしょう。

 

というわけで、次の投稿からは、これらの疑問に対する答えを探していきたいと思います。

 

 

 

ビットコインの相場は予測可能か? (1) はじめに

ビットコイン

ここ最近、ビットコインに関するニュースを聞かない日はありません。

2011年に100円ほどだったビットコインの価格は、一時200万円を超え、
投資とは縁がない人からも大きく注目を集めました。
ビットコインで資産を急速に増やした人を指す「億り人」という言葉まで誕生しました。

人間というのは欲深い生き物ですから、そういうニュースを見ると
自分にも稼げるんじゃないかと考えます。
そうして徐々にビットコインが大衆にも浸透していって、
テレビCMでも頻繁に見かけるようになりました。

しかしながら、当のビットコインの価格は、2018年2月4日現在100万円を割り、
巷ではビットコインバブルの崩壊などと騒がれています。

それでもビットコインに対する世間の興味は尽きません。何故なのでしょうか。

それは、ビットコインブロックチェーンという画期的な新技術が使われているからとか、
ビットコインには貨幣の歴史を変えるポテンシャルがあるからとか、
そういう理由ではありません。

理由は単純に「ビットコインでまだ稼げる可能性があるかもしれないから」です。
「今は価格が下がっているけど、少し経ったらまた上がり始めるはず」とか、
「上がり始めたらビットコインを買ってみよう」とか、
そう考えている人が大勢いるから、ビットコインに注目が集まるのです。

人間の欲、特に金銭に対する欲求は凄まじいものがあります。
資本主義とは、人間の金銭に対する欲求を最大限活かして競争させ、
経済成長へと結びつけるシステムです。
現代社会の高度な文明の源泉が金銭に対する欲求だと考えると、
「まだ儲かるかもしれない」ビットコインに大きな注目が集まるのも頷けます。

 

ビットコインの相場はどうなるの?

さて、そこで気になるのが

ビットコインの価格は再び上がるのか、それとも下がり続けるのか

ということでしょう。
言い換えると、ビットコインの相場は今後どうなるのかということです。

一般的な投資、すなわち株や為替については「投資理論」という考え方が既に存在します。
誕生して間もないビットコインとは違い、株式は数百年の歴史を持ちます。
その数百年の間に、数々の専門家が無数の分析を行っているのです。

おそらくこれを読んでいる方の多くは、
投資理論に関する知識はあまり持っていないかと思います。

そこで今回は、その投資理論の考え方をなるべくわかりやすく解説しながら、
ビットコインの相場は予測可能か?」
という疑問に対する答えを探していきたいと思います。

本編となる次の投稿からは、一般的な投資理論についての解説をしていきます。

もし興味をお持ち頂けましたら、お付き合い頂けますと幸いです。