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ビットコインの相場は予測可能か? (6) 仮想通貨とは何か

仮想通貨とは

ビットコインの相場の話に入る前に、まずは、いわゆる「仮想通貨」について概要を解説したいと思います。ビットコインもこの仮想通貨の一種に分類されます。というよりも、ビットコインから仮想通貨の歴史が始まったのです。

仮想通貨は、一言で言えば、インターネットを介して電子データで取引をする「通貨のようなもの」です。とはいえ、単に電子データでの取引なら、もう何十年も前から実用化されています。仮想通貨がここまで話題に上っているのは、ある革新的な暗号化技術が採用されているからです。その暗号化の技術は、ブロックチェーン技術とよばれます。

 

仮想通貨を特徴づける「ブロックチェーン技術」

ブロックチェーンとは、電子取引における取引の信頼性を飛躍的に高める技術です。電子取引は、電子データの送受信ですから、どうしてもハッキングの対象になり、取引そのものが改竄される危険性を孕んでいます。ブロックチェーンでは、過去の取引がブロックに分けられ、過去から現在までの全ての取引が、複雑な計算によりチェーンのように紐付けてられています(この計算のことを「マイニング」と呼びます)。過去の取引を改竄しようとすると、チェーンによって紐付けられた現在の取引までの全ての取引を計算し直さなければならず、現実的には改竄が不可能なのです。これが、ブロックチェーンによる取引の信頼性が担保される仕組みです。

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この説明からもわかる通り、ブロックチェーンそのものに全く新しい技術が使われている訳ではありません。ブロックチェーンとは、言うなればアイデアのようなものです。一度思いついてしまえば、ブロックチェーンをプログラムすることはそれほど難しくありません。しかし、その誰も思いつかなかったアイデアを生み出した事こそが、ブロックチェーンが革新的である理由なのです。

 

普通のお金(法定通貨)との違い

仮想通貨は「通貨」という名が付いていますが、日常生活で使う通貨、すなわち「日本円」や「ドル」などとは大きく異なります。いわゆる通常の通貨は「法定通貨」ともよばれます。

法定通貨と仮想通貨の最も大きな違いは、通貨をコントロールする管理主体の有無です。法定通貨の場合は、通貨を発行する国家が責任を持って、通貨の流通を管理します。日本円の場合、日本政府が管理主体となります。

一方、仮想通貨の場合は、管理主体が存在しません。円やドルなどは、国家が責任を持って管理しているので、国が崩壊しない限り価値が保証されるというメリットがあります。一方、その国の財政状況や政策によって価値が左右されるというデメリットもあります。そんな中、世界中のどの国にも縛られず、世界中の誰とでも自由に取引できる通貨が作れないか──それがビットコインの理念なのです。

法定通貨の場合は、紙幣に複雑な偽造防止の処理などを施すことによって取引の安全性を高めています。仮想通貨において、偽造防止処理に相当するものがブロックチェーンなのです。

 

国家による保証「強制通用力」 

管理主体の有無以外に、もう一つ重要な違いがあります。それは、法定通貨には「強制通用力」という効力が国家によって保証されているという点です。強制通用力とは「取引において法定通貨での支払いを拒否できない」という性質のことです。すなわち、「日本でのモノの売り買いには、必ず日本円が使えますよ」ということを国家が保証しているのです。

日本円は変動相場制の下に運用されていますから、国際的に見た日本円の価値は、投資家の思惑に大きく左右されます。それでも、日本円の価値が突然何倍にもなったり、逆に突然ゼロになったりはしません。それは、日本円が日本という国家により管理・運用されているという「国の信用」と、日本円で日本のモノを買うことができるという「モノの信用」、これらの「見えない価値」が日本円の中に含まれているからです。

 

話を仮想通貨に戻し

さて、曲がりなりにも通貨の名を冠する仮想通貨について再考してみましょう。仮想通貨は「国家からの自由」を謳う通貨ですから、もちろん管理・運用主体に国は関与しません。また、もちろん強制通用力も持ち合わせていません。法定通貨とは、性質が全く異なることがお分かりいただけるでしょう。この違いが、今後の議論で重要になってきます。

 

前段にしては話が長くなってしまいましたが、仮想通貨がどういったものなのか、概要は把握いただけたかと思います。それでは、次回から本題の仮想通貨の相場予測に入りましょう。

 

 

参考文献 

池尾和人『現代の金融入門』

板谷敏彦『金融の世界史』

田渕直也『ファイナンス理論全史』

中島真志『アフター・ビットコイン